サイトアイコン 化学に関する情報を発信

アルキンの付加反応:HX・X2付加と水和

アルキンは炭素‐炭素三重結合をもつため、アルケンよりも不飽和度が高い化合物です。
そのため、付加反応では三重結合が段階的に変化し、最終的にアルケンやアルカン、あるいはカルボニル化合物へと変換されます。

ただし、アルキンの反応は単に「アルケンの反応がもう一回起こる」とだけ考えると整理しにくくなります。
実際には、付加が一当量で止まるか、二当量まで進むか、水和の後に互変異性が起こるかなど、アルキン特有のポイントがあります。

ここでは、アルキンに対する HX 付加、X₂ 付加、水和反応を整理し、最終的にどのような生成物が得られるのかを体系的に確認します。

アルキンの付加反応をどう考えるか

アルキンの三重結合は、σ結合一つと π 結合二つから成り立っています。
このため、付加反応ではまず一つの π 結合が失われてアルケンになり、さらにもう一回付加が起こればアルカン相当の構造になります。

したがって、アルキンの付加反応では、一当量の試薬を使ったときと、過剰量を使ったときで生成物が変わることがあります。
また、アルケン段階で止まった生成物が E/Z 異性を示すこともあります。

このように、アルキンの反応では
「どこに付加するか」
「何回付加するか」
「最終的にどの官能基になるか」
を分けて考えることが重要です。

HX の付加

アルキンにハロゲン化水素 HX を作用させると、三重結合に H と X が付加します。
一当量の HX を用いると、生成物は一般にハロゲン置換アルケンになります。

不対称アルキンでは、この反応も基本的にはマルコフニコフ則に従います。
つまり、水素はより水素の多い炭素側に入りやすく、ハロゲンはより置換された炭素側に入りやすくなります。

ただし、アルケンへの付加と同様に、ここでも中間体の安定性が反応の向きを決めます。
そのため、単に規則として暗記するのではなく、より安定なビニルカチオン様の配置が有利になる方向に進むと考える方が本質的です。

HX を過剰に用いると、もう一回付加が起こります。
その結果、同じ炭素にハロゲン原子が二つ入った geminal dihalide が得られます。
したがって、アルキンへの HX 付加では、一当量ならハロアルケン、二当量なら geminal dihalide という整理が基本になります。

X₂ の付加

アルキンに Br₂ や Cl₂ を作用させると、ハロゲンが付加します。
一当量の X₂ を用いると、まずジハロアルケンが生成します。

このとき、反応は一般に anti 付加の傾向を示すため、生成するアルケンは trans 型、あるいは E 型の関係をとりやすくなります。
これは、ハロニウムイオン様の中間体を経由して反対側から開環が起こると考えると理解しやすくなります。

さらに X₂ を過剰に用いると、二回目の付加が進み、最終的には四ハロゲン化物が得られます。
つまり、三重結合の両炭素にそれぞれ二つずつハロゲンが結合した形になります。

したがって、X₂ 付加でも
一当量ならジハロアルケン、
二当量ならテトラハロ化物、
という整理が基本です。

アルキンの水和とは何か

アルキンに水を付加させると、見かけ上は OH 基と H が三重結合に導入されます。
しかし、アルキンの水和では、最終生成物を単純なアルコールとして考えてはいけません。

最初に生じるのはエノールと呼ばれる構造です。
エノールとは、炭素‐炭素二重結合に直接 OH 基が結合した化合物です。
この構造は多くの場合、そのままでは安定ではありません。

そのため、エノールはすぐにケト‐エノール互変異性を起こし、より安定なカルボニル化合物へ変わります。
したがって、アルキンの水和では
「最初にエノールができる」
「しかし最終的にはケトンやアルデヒドになる」
という流れを押さえることが重要です。

酸触媒水和とマルコフニコフ型生成物

アルキンの代表的な水和法の一つが、Hg²⁺ を用いた酸触媒水和です。
この条件では、水がマルコフニコフ型に付加し、まずエノールが生じます。
その後、互変異性によってケトンへ変わります。

末端アルキンにこの反応を行うと、最終的にはメチルケトンが得られます。
たとえば、アセチレン誘導体に対する水和では、OH がより置換された炭素側に入る形のエノールが生じ、それがケトンへ変わります。

内部アルキンでも同様に、最終的にはケトンが得られます。
したがって、Hg²⁺ を用いた水和では「アルキンからケトンを作る反応」として理解すると整理しやすくなります。

ヒドロホウ素化‐酸化による水和

アルキンの水和には、ヒドロホウ素化‐酸化も用いられます。
この方法では、まずホウ素が三重結合に付加し、その後の酸化で OH 基へ変換されます。

末端アルキンに対してこの反応を行うと、anti-Markovnikov 型の付加に相当するエノールが生じます。
このエノールは互変異性によってアルデヒドへ変わります。

ここが酸触媒水和との大きな違いです。
Hg²⁺ を用いた水和では末端アルキンからメチルケトンが得られますが、ヒドロホウ素化‐酸化ではアルデヒドが得られます。

したがって、末端アルキンの水和では
酸触媒水和 → メチルケトン、
ヒドロホウ素化‐酸化 → アルデヒド、
という対比を明確に覚えておくことが重要です。

ケト‐エノール互変異性とは何か

アルキンの水和を理解するうえで避けて通れないのが、ケト‐エノール互変異性です。
エノールは、OH 基が二重結合炭素に結合した構造ですが、多くの場合はカルボニル化合物より不安定です。

そのため、プロトン移動と二重結合位置の変化を通じて、ケトンやアルデヒドへ自発的に変換されます。
この変換は、単に「形が変わる」だけではなく、より安定な官能基へ移るという意味をもちます。

アルキンの水和では、試験でも問題でもしばしば
「最初の付加生成物」と
「最終生成物」
を区別して考える必要があります。
最終生成物を問われている場合は、互変異性後のカルボニル化合物を答えることになります。

アルキン付加反応をまとめて整理する

アルキンへの HX 付加では、一当量ならハロアルケン、二当量なら geminal dihalide が得られます。
X₂ 付加では、一当量ならジハロアルケン、二当量ならテトラハロ化物が得られます。
水和では、まずエノールが生じ、最終的にはケトンまたはアルデヒドになります。

このように、アルキンの付加反応は多様に見えますが、
「三重結合が一段階ずつ飽和していく」
「水和だけは互変異性を経てカルボニル化合物になる」
という軸で整理すると理解しやすくなります。

また、マルコフニコフ型か anti-Markovnikov 型かを意識すると、最終生成物の位置異性も予測しやすくなります。
特に末端アルキンでは、どの水和法を使うかによってケトンになるかアルデヒドになるかが変わるので、ここは必ず区別しておきたいところです。

練習問題

問題1|アルキンに HX を一当量付加したとき、一般にどのような生成物が得られますか。

解答:一般に、ハロゲン置換アルケンが得られます。

問題2|アルキンに X₂ を二当量付加すると、最終的にどのような生成物が得られますか。

解答:三重結合の両炭素にそれぞれ二つずつハロゲンが付加したテトラハロ化物が得られます。

問題3|アルキンの水和で最初に生じるが、通常はそのまま最終生成物にならない構造を何と呼びますか。

解答:エノールです。

問題4|末端アルキンに対する Hg²⁺ を用いた水和と、ヒドロホウ素化‐酸化では、最終生成物はそれぞれ何になりますか。

解答:Hg²⁺ を用いた水和ではメチルケトンが得られ、ヒドロホウ素化‐酸化ではアルデヒドが得られます。

次に読むべき記事

モバイルバージョンを終了