サイトアイコン 化学に関する情報を発信

立体障害(混み合い)と反応性:SN2が遅い理由

SN2が苦手になる最大の原因は、「求核性」「脱離基」ばかり見て、立体(混み合い)を後回しにすること
SN2は“背面攻撃”が必須なので、反応点の周りが混んでいるだけで速度が激落ちする
逆に言えば、立体障害を見抜けるとSN2/SN1/E2の判断が一気に安定する

この記事でできること

先に結論(SN2の速度は“混み合い”が支配する)

1. 立体障害とは何か(混み合い=近づけない)

立体障害(steric hindrance)は、原子・置換基が“場所を取る”ことで
反応相手が近づけなくなる効果
SN2では「反応点に近づく」こと自体が必須なので、立体障害の影響が非常に大きい

2. SN2の機構が「立体に弱い」理由

2-1. SN2は背面攻撃が必須

SN2は一段階反応で、求核剤が入るのと脱離基が出るのが同時
このとき、求核剤は脱離基の反対側から攻撃する(背面攻撃)
その結果、立体は反転(ワルデン反転)になる

2-2. 遷移状態が混み合う

SN2の遷移状態では、反応炭素は「求核剤と脱離基に同時に“つかまれた”状態」になる
この瞬間、反応点の近くに置換基が多いほど、ぶつかり(立体反発)が増える
→ 遷移状態のエネルギーが上がり、速度が下がる

3. 基質の混み合いが支配する速度順

3-1. 最重要ランキング

3-2. “α位”が特に効く

SN2で一番効くのは、脱離基が付いた炭素(α炭素)の混み合い
ここに置換基が増えるほど背面攻撃が物理的に困難になる

3-3. “β位”も効く(ネオペンチル問題)

α位が1級でも、β位が極端に混むとSN2が非常に遅くなる
典型がネオペンチル((CH3)3C–CH2–LG)
見た目は1級でも、近づく経路が塞がれてSN2が進みにくい

4. 求核剤側の立体:かさ高いとSN2が遅い

4-1. かさ高い求核剤は“攻撃”がしにくい

SN2は反応炭素に接近して軌道重なりを作る必要がある
求核剤自身が大きいと、近づく前に立体反発で止まりやすい

4-2. かさ高い強塩基はE2へ寄りやすい

かさ高い塩基(例:t-BuO−)は

その結果、置換より脱離が優勢になりやすい

5. 立体障害は「何と競合するか」を決める

5-1. 3級基質:SN2が消える → SN1/E1/E2へ

3級は背面攻撃できない

5-2. 2級基質:SN2とE2が競合しやすい

2級は混み合いがそこそこあるため

6. コンフォメーションとの接続(Newmanが効く)

SN2は「近づける配座」かどうかで速さが変わる
Newman投影で混み合い(anti/gauche)を見れるようになると、
“この基質は反応点が塞がりやすい”を図で判断できる
またE2ではanti配向が必須なので、立体と配座はセットで重要

よくあるミスと対策

ミス1:求核剤が強いなら必ずSN2だと思う

3級・混み合い2級では、強い塩基はE2へ逃げやすい
まず基質の混み合い(α位)を見る

ミス2:1級なら必ずSN2だと思う

ネオペンチルのようにβ位が極端に混むと例外が出る
「αだけでなくβも見る」をルール化する

ミス3:SN2の立体反転を忘れる

SN2は背面攻撃=反転
判定とセットで書く(得点源)

練習問題(演習)

問題1|SN2が立体障害に弱い理由を、一言で説明してください。

解答:
SN2は背面攻撃で反応炭素に接近して遷移状態を作る必要があり、反応点周囲が混むほど近づけず遷移状態が高エネルギーになるため

問題2|SN2の速度順を一般形で答えてください(メチル、1級、2級、3級)。

解答:
メチル > 1級 > 2級 >> 3級(ほぼ不可)

問題3|ネオペンチル基質((CH3)3C–CH2–LG)が「1級なのにSN2が遅い」理由を一言で。

解答:
α位は1級でもβ位が極端に混み合っており、背面攻撃の接近経路が立体的に塞がれるため

問題4|2級基質にかさ高い強塩基(例:t-BuO−)を作用させると、SN2より起こりやすい反応は何ですか?理由も一言で。

解答:
E2
理由:かさ高い塩基は背面攻撃(SN2)がしにくく、β-Hの引き抜き(脱離)へ寄りやすいから

問題5|SN2の立体化学はどうなりますか?(生成物の配置)

解答:
背面攻撃によるワルデン反転(立体反転)

次に読む記事

モバイルバージョンを終了