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中間体の安定性:カルボカチオン・ラジカル・アニオン

有機化学の「反応が進む/進まない」「どの生成物が主か」は、中間体の安定性で決まる場面が多い
SN1/E1が起こるか(カチオンが作れるか)
ラジカル反応でどこが切れるか(どのラジカルが安定か)
塩基がどこを引き抜くか(どのアニオンが安定か)
これらは全部「中間体の安定性比較」に還元できる

この記事でできること

先に結論(最短の覚え方)

ざっくりランキング(典型)

1. 中間体を比較するときの基本姿勢

「生成する種」を描いてから比較する

たとえば酸性度なら共役塩基、SN1ならカチオン、ラジカル反応なら生成ラジカル
比較の対象を「反応前の分子」ではなく「問題が本当に問う中間体」に揃える

安定化の道具箱(優先順位つき)

2. カルボカチオン(Carbocation)の安定性

2-1. 何が不安定なのか

カルボカチオンは電子不足
電子密度を供与して「正電荷を薄める」ほど安定になる

2-2. 置換(超共役)で安定化:3級 > 2級 > 1級

アルキル基が多いほど、隣接σ結合(C–HやC–C)が電子密度を供与して正電荷を分散できる(超共役)
その結果、一般に 3級 > 2級 > 1級 > メチル の順に安定

2-3. 共鳴が入ると一気に最強:ベンジル・アリル

正電荷がπ系へ分散できると、置換より強く安定化される

2-4. −Iはカチオンを不安定化、+Iは安定化

カチオンは「電子が欲しい」
だから、電子を引く−I基が近いと不利になりやすい
逆にアルキル基の+Iは(超共役と合わせて)有利

2-5. 転位が起こる理由(入口)

SN1/E1では、より安定なカチオンへ移るために1,2-ヒドリドシフトやアルキルシフトが起こり得る
覚え方は単純で、「より安定なカチオンが作れるなら作る」

3. ラジカル(Radical)の安定性

3-1. ラジカルは「不対電子」をどう安定化するか

ラジカルは電荷ではなく不対電子を持つ
それでも基本の発想は同じで、「分散できるほど安定」

3-2. 置換で安定化:3級 > 2級 > 1級

ラジカルも超共役で安定化される
だから一般に 3級 > 2級 > 1級 > メチル

3-3. 共鳴安定化が最強:ベンジル・アリル

不対電子がπ系へ分散できると安定化される
そのためベンジルラジカル、アリルラジカルは頻出の「安定ラジカル」

3-4. ハロゲン化の選択性(入口)

ラジカル反応で「どこが置換されるか」は、生成ラジカルの安定性で傾向が出る
安定なラジカルができる位置ほど生成物が有利になりやすい
ここは“安定性→選択性”の典型例

4. カルボアニオン(Carbanion)の安定性

4-1. カルボアニオンは「負電荷」をどう安定化するか

負電荷は「電子が多すぎる」状態
安定化の方向は

4-2. 共鳴が最強:エノラート、ベンジル/アリルアニオン、カルボキシラート

負電荷がOなどへ分散できる共鳴は非常に強い

4-3. 混成(s性):sp > sp2 > sp3(負電荷が炭素上の場合)

s性が高いほど電子は核に近く、低エネルギーで安定
だから炭素上の負電荷は sp が最も安定
これが「末端アルキンが比較的酸性」の核になる

4-4. 誘起効果:−Iはアニオンを安定化、+Iは不安定化

−I基は電子を引き、負電荷の“濃さ”を下げる → 安定化
+I基は電子を押し出し、負電荷を“押し上げる” → 不安定化(一般論)

4-5. 置換(超共役)はアニオンでは“基本不利”になりやすい

カチオン/ラジカルと違い、アニオンは電子過剰
アルキル基は+Iで電子を押し出すため、単純な炭素アニオンは置換が増えるほど不利になりやすい
ただし、実戦では「共鳴と電気陰性度」が最優先なので、まずそこを見てから判断する

5. まとめ表:試験で使う最小比較

中間体 最強の安定化 置換の効果 誘起効果(近くの置換基) 混成(炭素上の電子)
カルボカチオン 共鳴(ベンジル/アリル) 3級 > 2級 > 1級 +I有利、−I不利 (入口では主にsp2平面性が重要)
ラジカル 共鳴(ベンジル/アリル) 3級 > 2級 > 1級 (傾向はあるが、まず共鳴と置換が主) (多くはsp2的に扱うと整理しやすい)
カルボアニオン 共鳴(Oへ分散など) 基本は置換増で不利になりやすい −I有利、+I不利 sp > sp2 > sp3(安定)

6. 練習問題(演習)

問題1|カルボカチオンの安定性:一般に 1級・2級・3級のどれが最も安定ですか?理由を一言で。

解答:
3級が最も安定
理由:置換基が多いほど超共役と+Iで正電荷が分散・緩和されるため

問題2|次のうち、より安定なカルボカチオンはどれですか?(a)tert-ブチルカチオン(b)ベンジルカチオン 理由も一言で。

解答:
(b)ベンジルカチオン
理由:正電荷が芳香環へ共鳴分散でき、置換による安定化より強い

問題3|ラジカルの安定性は 1級・2級・3級でどう並びますか?理由を一言で。

解答:
3級 > 2級 > 1級
理由:超共役で不対電子が分散し、置換が多いほど安定化されるため

問題4|カルボアニオン(負電荷が炭素上)の安定性で、sp/sp2/sp3はどう並びますか?理由も一言で。

解答:
sp > sp2 > sp3
理由:s性が高いほど電子が核に近い低エネルギー軌道に乗り、負電荷が安定化されるため

問題5|−I基が近くにあると、(a)カルボカチオン(b)カルボアニオン はそれぞれ安定化しますか?不安定化しますか?

解答:
(a)カルボカチオン:一般に不安定化(電子を引かれてさらに電子不足になる)
(b)カルボアニオン:一般に安定化(負電荷が誘起的に緩和される)

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