ここが曖昧だと、形式電荷・共鳴・酸塩基・反応機構まで全部が不安定になるこの記事では、講義〜試験で通用するルイス構造を
“最短手順(テンプレ)”として固定し、典型例と練習問題で仕上げる
この記事でできること
- ルイス構造を描く最短手順(5ステップ)を再現できる
- 形式電荷を使って「より良い構造」を選べる
- 二重結合・三重結合・共鳴が必要なケースを見抜ける
- 頻出の例(CO2、NO3−、NH4+など)を迷わず描ける
先に結論:最短手順(5ステップ)
ルイス構造は、必ずこの順で描くとミスが激減する
- 価電子数を合計する(イオンなら電荷を反映)
- 骨格(σ結合)を作る(中心原子を決め、単結合でつなぐ)
- 末端原子の八電子則を満たす(孤立電子対で埋める)
- 中心原子の八電子則をチェック(足りなければ多重結合を作る)
- 形式電荷で最適化(電荷分離を小さく、電荷の位置を妥当に)
Step0:描く前の超基本(最低限のルール)
八電子則の対象
第2周期(C, N, O, F)は八電子則が特に強い
Hは2電子(例外として“2で満たす”)
よく使う「結合数の目安」
- H:1結合
- ハロゲン(F, Cl, Br, I):1結合(孤立電子対3組)
- O:2結合(孤立電子対2組)
- N:3結合(孤立電子対1組)
- C:4結合(孤立電子対0が基本)
Step1:価電子数を合計する
価電子数の合計が「使える電子」の総量
ここを間違えると全て崩れるので、必ず式で書く
イオンの調整ルール
- 陰イオン(−):電子を足す(例:−1なら +1e−)
- 陽イオン(+):電子を引く(例:+1なら −1e−)
Step2:骨格(σ結合)を作る
中心原子の決め方(原則)
- 一番電気陰性度が低い原子が中心になりやすい(Hは中心にならない)
- 同種なら「最も多く結合する」原子が中心になりやすい
- 有機では、Cが中心になることが多い
まずは単結合で全てをつなぐ(多重結合は後で作る)
Step3:末端原子を八電子則で埋める
末端原子(中心以外)に孤立電子対を足して、八電子(Hは2電子)にする
ここでは中心原子の八電子則はまだ気にしなくてよい
Step4:中心原子の八電子則を満たす(必要なら多重結合)
中心原子の周りの電子が8に足りなければ、多重結合を作る
多重結合の作り方
末端原子の孤立電子対を1組「結合に変換」して、二重結合を作る
それでも足りなければ三重結合
ここでの注意
無理に多重結合を作るのではなく、最後に形式電荷で“妥当な”形にする
とくに同じ価電子数で複数のルイス構造が描ける場合、次のStep5が決着をつける
Step5:形式電荷で最適化(採点基準)
形式電荷の式
形式電荷 = (価電子数) − (孤立電子数) − (結合電子数/2)
より良い構造の基準(この順で優先)
- 形式電荷の絶対値の合計が小さい(不要な電荷分離が少ない)
- 負電荷は電気陰性度の高い原子(O, N, ハロゲン)にある方が良い
- 正電荷は電気陰性度の低い原子(Cなど)にある方がまだ良い
- 八電子則(特に第2周期)を満たす構造が優先
例題で完全に理解する(典型4セット)
例1:CO2
手順の要点
- 価電子合計:C(4) + O(6)×2 = 16
- 骨格:O–C–O
- 末端Oを埋める → 中心Cが8未満 → Oの孤立電子対を使って二重結合
- 結論:O=C=O(両側二重結合、形式電荷0が基本)
例2:NH4+
手順の要点
- 価電子合計:N(5) + H(1)×4 − 1(+電荷)= 8
- 骨格:Nを中心にH4つ単結合
- 結論:Nは4結合で形式電荷+1(アンモニウム)
例3:NO3−(硝酸イオン)
手順の要点
- 価電子合計:N(5) + O(6)×3 + 1(−電荷)= 24
- 骨格:Nを中心にO3つ
- 中心Nの八電子を満たすため二重結合が必要
- 形式電荷が最小になる形は「二重結合が1本+単結合2本」
- 二重結合の位置が3通り → 共鳴(3つの等価構造)
例4:酢酸イオン CH3CO2−(カルボキシラート)
手順の要点
- 負電荷が2つのOに分散できる形が安定
- 「C=O と C–O−」が入れ替わる2つの共鳴構造
- この共鳴がカルボン酸の酸性度の根拠になる
よくあるミスと対策
ミス1:価電子合計がズレている
対策:必ず式で書く(元素ごとの価電子×個数、電荷で±)
最初にここを固定すると後が全部ラクになる
ミス2:Hに孤立電子対を付ける
対策:Hは2電子で完成、結合は1本だけ
それ以上は絶対に増えない
ミス3:Cが5結合、Oが3結合になる
対策:描いた後に「価数チェック」をルーティン化
Cは基本4、Oは基本2(例外はあるが基礎ではまずこれで検出)
ミス4:形式電荷を見ずに多重結合を決め打ち
対策:多重結合は“最後に”形式電荷で最適化
形式電荷が小さく、電荷の位置が妥当な構造が正解に近い
練習問題(演習)
解答:
価電子合計:C(4) + O(6)×3 + 2(2−)= 24
中心原子:C
解答:
孤立電子対:1組
形式電荷:NもHも基本0(中性分子)
解答:
二重結合(C=O)
理由:中心Cの八電子則を満たし、形式電荷を最小にするため
解答:
2通り(N=OがどちらのOにあるかで2つの等価な共鳴構造)
解答:
(1)価電子の総数が合っているか
(2)形式電荷と価数(Cが5結合、Oが3結合などの破綻)がないか
次に読む記事
- 形式電荷の考え方:安定な構造はどれ?(ルイス構造の採点基準が完成)
- 共鳴構造の描き方:電子はどこまで動かせる?(NO3−やカルボキシラートを理解)
- 反応機構の矢印ルール:出発点と到着点の作法(電子の移動に直結)
