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pKaの考え方:暗記から比較へ(頻出パターン)

pKaを「数字の暗記」として扱うと、有機化学は一気に苦行になります。
でも実戦で必要なのは、細かい数値の丸暗記ではなく、(1)どちらが強酸か、(2)平衡がどちらに寄るか、(3)どのHが抜けやすいか、を素早く比較できることです。
この記事では、マクマリー(OpenStax版)のpKaの使い方と、講義・試験で頻出の比較パターンを「型」として固定します。

この記事でできること

結論:pKaは「比較ツール」

テンプレ:pKaで平衡を一発判定する

酸塩基反応の基本形

HA + B: ⇄ A− + HB+

判定ルール(これだけ)

超重要:ΔpKaの感覚

実験・試験では「明らかに進む/ほぼ進まない」を判断したい場面が多い。
目安として:

※厳密な平衡定数計算は別記事で扱う

頻出パターン1:O–H酸(アルコール vs カルボン酸)

観察(典型pKa)

なぜ?(共役塩基の安定性で説明)

アルコールがH+を失うとアルコキシド(RO−)になる。負電荷は主にO上に集中。
一方カルボン酸がH+を失うとカルボキシラート(RCO2−)になり、負電荷が共鳴で分散して安定。
つまり、共鳴で共役塩基が安定 → pKaが下がる(強酸化)

頻出パターン2:フェノールがアルコールより酸性(共鳴)

ポイント

フェノールはアルコールよりずっと酸性(フェノキシドが共鳴安定化)。
負電荷がOだけでなく芳香環(o/p位)に分散するため、共役塩基が安定になる。

試験での使い方

頻出パターン3:α水素(カルボニル隣)とエノラート(共鳴)

何が起きる?

C=Oの隣(α位)のHは「抜けるとエノラートになれる」ため、通常の炭化水素より酸性が高い。
エノラートは共鳴で負電荷がOとα炭素に分散して安定。

よく使う目安(pKaレンジ)

頻出パターン4:末端アルキンが酸性(混成=s性)

観察(炭化水素のpKa)

なぜ?(混成で説明)

アセチリド陰イオンはsp混成でs性が高く(50%)、負電荷が核に近い低エネルギー軌道に乗るため安定。
だから末端アルキンは相対的に酸性が高い。

頻出パターン5:誘起効果(−I)で酸性が上がる

代表例:フッ素置換アルコールが酸性化

電子求引性置換基(ハロゲンなど)があると、アルコキシドの負電荷が“分散”して安定化し、酸性が上がる。
例として、エタノール(pKa 16)に対し 2,2,2-トリフルオロエタノール(pKa 12.43)のようにpKaが下がる。

「暗記」から「比較」へ:最低限のpKa地図(覚えるのはレンジ)

まずはこの並びを固定

強酸(低pKa) ←──────────→ 弱酸(高pKa)

数字は「代表値を1つ」で十分

例:水15.7、酢酸4.8、末端アルキン25、ケトン19
これだけで、多くの“進む/進まない”が判定できる。

練習問題(演習)

問題1|OH− は酢酸(pKa 4.76)を脱プロトン化できますか?平衡はどちらに寄りますか?

解答:
できる(進む)。
酢酸(pKa 4.76)は水(pKa 15.74)より強酸なので、H+は酢酸→OH−へ移動して水ができる方向が有利。

問題2|NaOEt(共役酸=エタノール pKa 16)で、アセトン(pKa 19.3)を十分に脱プロトン化できますか?

解答:
ほぼできない(平衡は反応物側)。
アセトンはエタノールより弱酸(pKaが大きい)なので、エトキシドはアセトンのHを強くは奪えない。強塩基(例:LDAなど)が必要になる。

問題3|末端アルキン(pKa 25)は、NH2−(共役酸=NH3 pKa 35)で脱プロトン化できますか?

解答:
できる(進む)。
末端アルキン(pKa 25)はNH3(pKa 35)より強酸なので、NH2−は末端アルキンを脱プロトン化してアセチリドを与える。

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