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エナミン官能基の構造・性質・合成・反応・不斉合成応用まで徹底解説

エナミン(enamine)は、アルケンとアミンの構造的特徴を併せ持つ化合物であり、α-水素を持つカルボニル化合物と二級アミンの縮合により形成されます。
特に、カルボニル基の不斉アルキル化やアシル化を目的とした反応性中間体として、合成有機化学の中で非常に重要な位置を占めています。

本記事では、エナミンの構造・形成機構・化学反応・安定性・不斉合成や天然物合成への応用について、有機化学の視点から詳しく解説します。

エナミンの構造と命名法

基本構造

R₂C=CR–NR'₂

イミン(C=N)に類似しつつ、エナミンはより求核性が高く、安定性にも優れることが特徴です。

IUPAC命名法と慣用名

エナミンの生成と条件

反応式

カルボニル化合物 + 二級アミン ⇌ エナミン + H₂O

生成メカニズム

  1. アミンがカルボニル基に求核付加
  2. カルビノールアミン中間体の形成
  3. 脱水 → イミニウムイオン形成
  4. α-プロトン脱離 → エナミン生成

反応条件

エナミンの性質と反応性

共鳴構造

R₂C=CR–NR'₂ ↔ R₂C⁻–CR=NR'₂⁺

反応特性

エナミンの主な反応

① アルキル化

エナミン + R–X → Cα–アルキル化 → 加水分解 → α-アルキルケトン

炭素–炭素結合を導入できる有力な方法。

② アシル化

エナミン + アシルハライド → Cα–アシル化 → 加水分解 → β-ジケトン

③ マイケル付加反応

④ 還元反応(還元的アミノ化)

エナミン + H⁺ + 還元剤 → 飽和アミン

⑤ 環化反応

エナミンの加水分解

酸存在下で容易に元のカルボニル化合物とアミンへ戻る

R₂C=CR–NR'₂ + H₂O → R₂C=O + HNR'₂

不斉合成における応用

① L-プロリン触媒によるエナミン中間体

② 天然物合成

③ オルガノ触媒化学

エナミンの代表例と合成実例

① シクロヘキサノン + ピロリジン → シクロヘキサンエナミン

② アセトフェノン誘導体 + モルホリン → 芳香族エナミン

エナミンの注意点と保存性

まとめ:エナミンは求核反応の架け橋となる高機能官能基

次回は「ウレア(–NH–(C=O)–NH–)」をテーマに、構造・形成・水素結合・薬理学的応用などを解説します。

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