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フェノール官能基の構造・酸性・反応・検出・応用まで徹底解説

フェノール(phenol)は、芳香族環(主にベンゼン)にヒドロキシ基(–OH)が直接結合した化合物群です。
構造的にはアルコールの一種と考えられますが、電子共鳴による酸性強化芳香族求電子置換反応への高い反応性など、独自の化学的特徴を持っています。

この記事では、フェノール官能基の基本構造、酸性の理由、特徴的な反応、検出法、合成法、そして医薬品や高分子材料としての応用まで、有機化学の視点から詳しく解説します。

フェノールの構造と命名法

フェノールは、芳香環にヒドロキシ基(–OH)が直接結合した化合物で、芳香族ヒドロキシ化合物とも呼ばれます。

Ar–OH(Ar:芳香環)

IUPAC命名法

代表例

フェノールの酸性とその理由

フェノールは、アルコールと比較して酸性が強い(pKa ≈ 10)という特徴があります。

酸性の強さの理由

そのため、フェノールは水酸化ナトリウム(NaOH)などの弱塩基でも脱プロトンされますが、炭酸水素ナトリウム(NaHCO₃)では反応しない点がカルボン酸との識別に使われます。

フェノールの主な化学反応

① 芳香族求電子置換反応(EAS)

フェノール環は電子供与性の–OHの影響で活性化されており、求電子試薬と反応しやすい。

② アゾ化反応

ジアゾニウム塩とカップリングしてアゾ化合物(染料)を形成。

Ar–N₂⁺ + Ph–OH → Ar–N=N–Ph–OH

③ エステル化(エステル合成)

④ 酸化反応

フェノールの検出法

① フェリックイオン反応

Ph–OH + Fe³⁺ → 紫色錯体

フェノール類の定性試験として有名。

② 臭気・呈色変化

フェノールの合成法

① クメン法(工業的製法)

クメン → クメンヒドロペルオキシド → フェノール + アセトン

② アリールスルホン酸からの加水分解

Ar–SO₃H + NaOH + 熱 → Ar–OH

③ クロロベンゼンの水酸化ナトリウム処理

Ph–Cl + NaOH + 高温高圧 → Ph–OH

フェノールの応用例

① 医薬品・消毒薬

② 色素・染料

③ 高分子原料

④ 抗酸化剤

フェノールの安全性と取扱い

まとめ:フェノールは芳香族–OHの特異な反応性をもつ重要官能基

次回は、「アミン(–NH₂, –NHR, –NR₂)」をテーマに、構造分類、塩基性、反応性、生体分子や医薬での機能について解説します。

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