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チオール官能基(–SH)の構造・性質・酸化・反応・生体機能まで徹底解説

チオール(thiol)は、–SH基を持つ有機硫黄化合物であり、アルコール(–OH)に類似した構造ながら、反応性や物理的性質に大きな違いがあります。
特に強烈なにおい、酸化されやすさ、金属との高い親和性が特徴です。

生体内ではアミノ酸の1種「システイン」に含まれ、タンパク質の構造保持(ジスルフィド結合)や酸化還元バランスの維持に重要な役割を果たします。

チオールの構造と命名法

チオールは、炭素にスルフヒドリル基(–SH)が結合した構造を持ち、一般式は R–SH で表されます。
酸素(O)を硫黄(S)に置き換えたアルコールのアナログと考えると理解しやすいです。

IUPAC命名法

命名例

慣用名も広く使われており、チオール類は「マーカプタン」とも呼ばれます(例:エチルメルカプタン)。

チオールの物理的性質

チオールの酸性

–SHは比較的弱い酸性を持ちますが、アルコールよりも酸性が強い(pKa ≈ 10–11)。
そのため、塩基の存在下で容易にチオラートアニオン(RS⁻)を形成し、求核剤として作用します。

R–SH ⇌ R–S⁻ + H⁺

チオラートアニオンは、親電子性の中心(エポキシド、ハロアルカンなど)に反応しやすく、置換反応の中間体として活躍します。

チオールの主な反応

① 酸化反応

チオールは容易に酸化され、ジスルフィド結合(–S–S–)を形成します。

2 R–SH + [O] → R–S–S–R + H₂O

② 求核置換反応

R–S⁻ + R'–X → R–S–R' + X⁻

チオラートアニオンはSN2反応でハロアルカンと反応し、スルフィド(エーテルのS版)を形成します。

③ 金属との錯形成

④ 脱水縮合

生体内でのチオールの役割

① システイン(アミノ酸)

② グルタチオン(GSH)

③ 補酵素機能

チオールの応用と実用例

① 天然ガスの検知

② 分析化学

③ 表面修飾とナノ材料

④ 医薬・創薬

チオールの取扱いと注意点

まとめ:チオールは小さな–SHに秘められた高反応性・生体機能性官能基

次回は、「エーテル(R–O–R’)」をテーマに、その構造、反応性、酸性度との比較、合成法、応用について詳しく解説していきます。

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