アルデヒド(aldehyde)は、有機化学において最も基本的かつ重要なカルボニル化合物の一種です。
反応性が高く、合成・分析・生体内変換において中心的な役割を果たします。
本記事では、アルデヒドの構造・命名法・物理的性質・化学反応・検出法・合成法まで、図解を交えてわかりやすく解説します。
Contents
アルデヒドの構造と命名法
アルデヒドは、カルボニル基(C=O)に水素原子が1つ結合した官能基(–CHO)を持ちます。
炭素が2重結合で酸素と結合し、残りの結合は水素とアルキル基(またはH)に使われています。
アルデヒドのIUPAC命名では、アルカン名の末尾を「-al」に変更します。最も短いアルデヒドは「メタナール(ホルムアルデヒド)」です。
命名の例
- HCHO → メタナール(formaldehyde)
- CH₃CHO → エタナール(acetaldehyde)
- CH₃CH₂CHO → プロパナール(propionaldehyde)
アルデヒドの物理的性質
- 極性分子であり、水素結合は形成しないが、双極子相互作用が強いため比較的高沸点
- 低分子のものは水に可溶(例:ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド)
- 特有の刺激臭を持つ
代表例の物性
化合物 | 融点 (℃) | 沸点 (℃) | 水溶性 |
---|---|---|---|
ホルムアルデヒド | –92 | –21(ガス) | 高 |
アセトアルデヒド | –123 | 21 | 高 |
アルデヒドの主な化学反応
① 酸化反応
アルデヒドは容易に酸化されてカルボン酸になります。
R–CHO + [O] → R–COOH
酸化剤例:Ag⁺(Tollen試薬)、Cu²⁺(Fehling試薬)、CrO₃、KMnO₄など
② 還元反応
還元されると、第一級アルコールになります。
R–CHO + 2[H] → R–CH₂OH
還元剤例:NaBH₄、LiAlH₄、H₂ + Pd/C
③ アルドール反応
アルデヒド同士の縮合により、β-ヒドロキシアルデヒドを形成
2 CH₃CHO → CH₃CH(OH)CH₂CHO
触媒:希NaOHまたは酸性条件
④ シッフ塩形成
アミン(R–NH₂)と反応して、イミン(C=N)を生成します。
⑤ ヘミアセタール・アセタール形成
アルコールと反応して、ヘミアセタール・アセタールへと変化します。
アルデヒドの検出法(定性試験)
アルデヒドは還元性を持つため、定性反応で簡単に検出可能です。
① 銀鏡反応(Tollens試薬)
- アルデヒド → Ag⁺を還元 → 銀鏡が析出(Agが容器壁に付着)
② フェーリング反応
- 青色のCu²⁺溶液が赤褐色のCu₂O沈殿に
- 糖類の検出にも用いられる
アルデヒドの合成法
① 第一級アルコールの酸化
R–CH₂OH + [O] → R–CHO
酸化剤:PCC、DMP(Dess-Martin)、Swern法など
② アルキンの水和(水銀触媒)
末端アルキン + H₂O → アルデヒド(中間にエノール → ケト–エノール互変異性)
③ ハイドロホルミル化反応
アルケン + CO + H₂(Rh触媒)→ アルデヒド
アルデヒドの応用例
- ポリマー前駆体(ホルムアルデヒド系樹脂)
- 香料・フレーバー(例:シトロネラール)
- 医薬品原料(イミンを経由した合成)
- 有機合成中間体(C–C結合形成)
まとめ:アルデヒドは反応性・分析性に優れた万能官能基
- アルデヒドはC=OにHが結合した高反応性官能基
- 酸化・還元・縮合・付加など多彩な反応性を持つ
- Tollens試薬やFehling液による検出が可能
- 合成・分析・応用の広範な現場で活躍
次回は、カルボン酸(–COOH基)をテーマに、その酸性・反応性・誘導体との関係を掘り下げていきます。
🧭 関連リンク
- 👉 【まとめ記事】官能基シリーズ 一覧はこちら
- 👉 【第1回】アルコール官能基
- 👉 【第3回】カルボン酸官能基(近日公開)