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【第9章】酸化還元反応の基礎

酸化還元反応(Redox Reaction)は、化学全体を貫く基本的な概念です。
特に有機化学においては、アルコールの酸化、カルボン酸の還元、炭素–炭素結合形成など、さまざまな反応が酸化還元として整理できます

本章では、酸化還元反応の定義や電子の数の増減による見分け方、そして有機化学での典型例を紹介しながら、反応設計や合成への応用まで展開していきます。

酸化還元反応とは?(有機化学における定義)

一般的な定義

しかし有機化学では、電子の直接的な移動よりも、以下のような指標で酸化・還元を判断するのが実用的です。

有機化学での酸化・還元の見分け方

例:

酸化の例: アルコール → アルデヒド/ケトン → カルボン酸

還元の例: ケトン → アルコール → アルカン

代表的な酸化反応

① アルコールの酸化

使用される酸化剤の例

② アルケンの酸化

③ 芳香環の酸化

代表的な還元反応

① カルボニル化合物の還元

使用される還元剤の例

② カルボン酸/エステルの還元

LiAlH₄を使えば、カルボン酸やエステルもアルコールまで還元可能

③ ニトロ化合物の還元

酸化剤・還元剤の見分け方と使い分け

酸化剤

還元剤

反応設計の際には、「対象の官能基」「最終的な構造」「副反応の有無」を考慮して酸化剤・還元剤を選びます。

酸化還元反応の実例と応用

① 保護・脱保護操作

② 立体化学の制御

③ 生体内の酸化還元(バイオ系)

④ 有機合成における酸化還元の流れ

アルコール → アルデヒド → カルボン酸 → アミド → 還元 → アミン というように、反応の進行方向を酸化還元でデザインする

まとめ:酸化還元をマスターすれば反応設計ができる

次章では、こうした変換をさらに自在に行うための「反応選択性」と「合成計画(レトロシンセシス)」の基本を扱います。これまで学んだ知識を統合し、有機化学を“設計”する段階に進んでいきましょう。

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