医薬品の歴史
医薬品の歴史は「人類の歴史」と共に歩んできました。
昔のくすり
昔の人々は、木や草花、虫、鉱物などの自然にあるものを薬として使っていました。
今から4300年前にチグリス・ユーフラテス川流域に文明を築いたシュメル人は、塩や硝石、桂皮などを薬にしていました。
同時代の中国では、神農本草経という書が編集され、麻黄をはじめとする300種以上の薬草がまとめられました。
19世紀以降のくすり
19世紀に入ると科学の進歩に伴い、薬の有効成分が分かるようになってきました。
その代表例がモルヒネです。1806年にドイツの薬剤師フリードリッヒ・W・A・ゼルチュルナーがアヘンからモルヒネを単離しました。
1800年代後半になると、天然物には存在しない化合物が合成され、薬として用いられるようになりました。
薬害
数多くの薬が登場する一方で薬害という問題も発生しました。
薬害で有名なのは、サリドマイドによる胎児での奇形の発生です。
薬理学の役割
病気の治療の手段として、薬物治療、外科的治療、放射治療、物理療法、精神療法などがあります。
このうち薬物治療は、治療法の代表として、あるいは他の治療法と併せて用いられるものとして重要です。
薬物治療を上手く行うためには、治療の目的に合う主作用を最大化するべきです。
しかし、治療目的とは異なる副作用は小さくする必要がありあります。
このためには、病気・病態への知識に加え、生体と薬物との相互作用についての知識も必要になります。
その生態と薬物との相互作用に関する知識を学ぶのが薬理学です。
また、未知の生命現象について薬を用いて解明するのも薬理学の役割です。
薬理学の構成
薬理学は、大きく薬力学と薬物動態学に分けられます。
薬物動態学
薬物動態学は、生体が薬物をどのように吸収・分布・代謝・排泄するかについての学問です。
これらはそれぞれの頭文字をとってADME (Absorption, Distribution, Metabolism, Excretion) と呼ばれます。
薬力学
薬力学は、薬物が生体にどのように働くのか、作用機序を含めて解明する学問です。
薬理療法の分類
薬理療法は大きく3つに分類されます。
原因療法 | 根本的に病気の原因を取り除く治療法 細菌感染に対する抗生物質による治療 癌に対する抗悪性腫瘍薬による化学療法 |
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補充療法 | 体内に不足している成分を補充する治療法 |
対症療法 | 症状に対して作用する薬を用い、症状の改善を図る治療法 |