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デービス酸化【Davis Oxidation】

デービス酸化は、主にケトン類やエステル類からα-ヒドロキシカルボニル化合物(アシロイン)を生成するものである。塩基性環境下で反応を行い、ケトンまたはエステルから対応するエノラートを生成させる。この反応は、アミドに対しても有効であることが示されている。Davis’ oxaziridine oxidationとも呼ばれる。

概要

歴史

1978年にドレクセル大学のFranklin Arnold Davis(現在テンプル大学教授 )らによって2-スルホニルオキサジリジンの合成が報告された。

現在でも最も使われているオキサジリジン試薬の一つである。

反応機構

カルボニルのα水酸化反応では、まず塩基がケトンまたはエステルを対応するエノラートに変換する。次に、エノラートアニオンを求核剤として、オキサジリジンの酸素原子をSN2機構で攻撃し、ヘミアミン中間体を形成する。この中間体はスルフィンイミンに分解され、プロトン化された後、目的のα-ヒドロキシケトンまたはα-ヒドロキシエステルになる。

実験手順

THF中のケトンの溶液に、-78℃でTHF中のKHMDSの溶液を滴加する。反応混合物を0℃ににて攪拌する。反応混合物を-78℃に冷却したのち、THF中のDavis’ oxaziridineの溶液を滴加する。この溶液を0℃にて攪拌する。原料の消失を確認したのち、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止させる。

実験のコツ

 

応用例

t-Bu基の立体障害により、立体選択的に進行

参考文献

1) Davis, F. A.; Jenkins, R., Jr.; Yocklovich, S. G. Tetrahedron Lett. 197819, 5171. DOI:10.1016/S0040-4039(01)85841-X
2) Davis, F. A.; Vishwakarma, L. C.; Billmers, J. G.; Finn, J. J. Org. Chem. 198449, 3241. DOI: 10.1021/jo00191a048
3) Davis, F. A.; Sheppard, A. C.; Chen, B.-C.; Serajul Haque, M. J. Am. Chem. Soc. 1990112, 6679. DOI: 10.1021/ja00174a035
4) Davis, F. A.; Chen, B. C. Tetrahedron Lett. 199031, 6823. DOI:10.1016/S0040-4039(00)97181-8
5) Davis, F. A.; Kumar, A.; Chen, B. C. Tetrahedron Lett. 199132, 867. DOI:10.1016/S0040-4039(00)92107-5
6) Martin Hebert, Gabriel Bellavance, and Louis Barriault, J. Am. Chem. Soc., 2022, 144, 17792-17796.

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