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早稲田大学 物理学科・応用物理学科の研究室ガイド【約30研究室を比較】

早稲田大学 物理学科・応用物理学科の研究室ガイド【約30研究室を比較】

今回は、早稲田大学先進理工学部 物理学科・応用物理学科のB3に向けて、研究室を紹介する。

この2学科を1つの記事にまとめたのには理由がある。物理学科と応用物理学科は、研究室の組織が共通しているからだ。大学院では「物理学及応用物理学専攻」として一体で運営され、約30の研究室が8つの部門に分かれている。

つまり、学科の違いよりも「どの部門・どの研究室か」のほうが、その後を決める。学科名で選択肢を狭めず、30研究室全体を見渡してから決めるのが正解である。

本記事の内容はあくまでも個人的な意見・感想であり、物理学科・応用物理学科公式のものではない。教員構成は2026年9月時点の公式サイトに基づくが、配属の前には必ず最新の情報を確認してほしい。

この記事で分かること
・物理学科・応用物理学科の8部門と約30研究室の全体像
・理論系と実験系の分かれ方
・化学と接点のある研究室はどれか
・研究室見学で必ず聞くべきこと

研究室見学はできるだけ事前にアポを取ってください

公式の教員一覧では、各教員が物理学科・応用物理学科のどちらに所属するかが明示されていない。学科所属を重視する場合は、見学時か学科事務に直接確認してほしい。この記事は部門(研究分野)を軸に整理している。

8部門の全体像

まず、8つの部門の性格を押さえておきたい。理論系(紙とコンピュータ)か実験系(装置)かで、日常がまったく変わる。

部門 研究室数 理論/実験
数理物理学 1 理論
原子核・素粒子理論 2 理論
高エネルギー・素粒子実験 1 実験(国際共同)
宇宙物理学 4 理論・観測
物性理論 1 理論
凝縮系物理学 3 実験(化学と接点あり)
生物物理学 3 実験・理論
情報・物理工学 15 実験・理論が混在
研究室の約半数が「情報・物理工学」部門に集まっているのがこの学科の構造的な特徴。量子光学、半導体、ソフトマター、アト秒物理、AIまで、実質的にはこの部門の中でさらに分野が分かれていると考えたほうがよい。

化学と接点のある研究室

先に、化学を学んできた人が興味を持ちやすい研究室をまとめておく。物理学科は化学系から遠いように見えるが、境界領域には確実に接点がある。

新倉弘倫 研究室(アト秒物理)

アト秒(10−18秒)という極端に短い時間スケールで、電子の動きそのものを追う研究室。

有機化学では反応機構を巻矢印で描くが、あれは電子が動いた「結果」を表す記法である。アト秒科学は、その電子の動きを実時間で観測しようという試み。化学結合が切れる瞬間に何が起きているのかを、直接見る研究である。

反応機構に強い関心を持った人にとって、これほど根源的なテーマはない。

研究室公式サイト

指導教員 新倉弘倫 教授
研究分野 アト秒レーザー・原子分子光学・高強度レーザー物理・波動関数イメージング(キーワード:アト秒科学/極端紫外光分光/高次高調波/光イオン化)

多辺由佳 研究室(ソフトマター物理学)

液晶やコロイド、高分子といったやわらかい物質の物理を扱う研究室。

液晶は、結晶と液体の中間にある状態で、分子の形と配向が巨視的な性質を決める。研究室HPによれば主題のひとつはカイラル液晶——有機化学で学ぶキラリティが、そのまま巨視的な構造と運動に効いてくる系である。分子構造から材料物性へつながる筋道が見えるテーマで、有機化学・高分子化学と地続きである。

教員紹介ページ(研究室サイトは2026年9月時点でメンテナンス中)

指導教員 多辺由佳 教授
研究分野 カイラル液晶の動的交差相関・有機超薄膜の音波物性・混合液晶の動的構造形成(キーワード:液晶/対称性の破れ/二次元系/非平衡構造)

溝川貴司 研究室(固体物理学・放射光分光)

放射光を使って固体の電子状態を調べる研究室。SPring-8などの大型施設に出張して測定するスタイルになる。

光電子分光やX線吸収分光は、化学の機器分析の延長線上にある技術。物質の中で電子がどう配置しているかを実測するという点で、無機化学・物理化学とつながる。

研究室公式サイト

指導教員 溝川貴司 教授
研究分野 強相関電子系・光電子分光・X線分光/散乱(キーワード:遷移金属化合物/超伝導/磁性/金属絶縁体転移)

勝藤拓郎 研究室(複雑量子物性)

強相関電子系など、電子同士が強く影響しあう物質の性質を実験的に調べる研究室。試料そのものを合成するところから始めることも多く、固体化学に近い作業が含まれる。

研究室公式サイト

指導教員 勝藤拓郎 教授
研究分野 遷移金属酸化物の物質開発・巨大外場応答を示す物質の開発・光学測定による強相関電子系の研究

高山あかり 研究室(表面物理学)

物質の表面に現れる特異な電子状態を扱う研究室。触媒反応が表面で起こることを思えば、化学との接点は深い。

研究室公式サイト

指導教員 高山あかり 教授
研究分野 新奇機能性材料の創成と先端計測による物性解明(キーワード:低次元物理/電子状態/構造解析/スピン伝導)

数理物理学・原子核・素粒子理論

紙と鉛筆、そして計算機で自然の基本法則を追う理論系。実験装置は使わない。

研究室(教員) 専門
小澤徹 数理物理学
安倍博之 素粒子理論
鷹野正利 理論核物理学
廣瀬茂輝 素粒子実験(高エネルギー)

素粒子実験(廣瀬研)は、CERNなど海外の巨大実験に参加する形になるのが一般的で、国際共同研究や長期滞在の機会がある点が他と大きく違う。

理論系志望なら、学部のうちに解析力学・量子力学・統計力学をどこまで詰めたかが配属後の立ち上がりを決める。見学時に「入る前に読んでおくべき本」を聞くのが最短ルート。

宇宙物理学

理論と観測の両方があり、扱うスケールは学部で最大。

研究室(教員) 専門
井上昭雄 観測宇宙物理学
辻川信二 宇宙物理学・相対性理論
山田章一 理論宇宙物理学
MOTZ Holger Martin 宇宙線物理学

観測系(井上研)は望遠鏡データの解析、理論系(辻川研・山田研)は数値シミュレーションが中心になる。MOTZ研究室は英語での指導が想定されるため、その点は見学で確認したい。

物性理論・凝縮系物理学

物質の性質を、理論と実験の両面から探る部門。化学と最も近い物理がここにある。

研究室(教員) 専門
望月維人 理論物性物理学
勝藤拓郎 複雑量子物性(上記参照)
溝川貴司 固体物理学・放射光分光(上記参照)
高山あかり 表面物理学(上記参照)

生物物理学

物理の手法で生命現象を測る部門。生命医科学科・電気情報生命工学科の生物物理系とテーマが重なるので、関心があるなら学科をまたいで見学したい。

研究室(教員) 専門
上田太郎 分子生物物理学
高野光則 生物物理学(理論・計算)
安田賢二 生物物理

情報・物理工学

研究室数が最も多く、内容も最も多様な部門。量子光学から医学応用、AIまで含まれる。上で触れた新倉研・多辺研もこの部門に属する。

研究室(教員) 専門
青木隆朗 量子光学
片岡淳 高エネルギー宇宙物理・医学応用
北智洋 光集積デバイス
小池茂昭 完全非線形偏微分方程式
澤田秀之 計測・情報工学
竹内淳 半導体デバイス工学
多辺由佳 ソフトマター物理学(上記参照)
新倉弘倫 アト秒物理(上記参照)
長谷川剛 AIエレクトロニクス
原山卓久 非線形物理学
福原武 量子多体制御
森島繁生 知能情報処理工学
山崎義弘 統計物理学・非線形動力学
湯浅一哉 量子物理学・量子情報
中里弘道 量子力学基礎論・場の量子論

この部門は「物理学科の中の別世界」と言ってよいほど幅がある。長谷川研(AIエレクトロニクス)や森島研(知能情報処理)はソフトウェア色が強く、竹内研・北研はデバイス作製が中心になる。同じ部門だからといって日常が似ているとは限らない点に注意したい。

研究室見学で必ず聞くべきこと

見学で聞くべき6つ
・コアタイムと、実際の在室時間(この2つはズレる)
・理論系なら、ゼミ・輪読の頻度と発表の負荷
・実験系なら、装置の待ち時間と、外部施設への出張頻度
・国際共同研究・海外滞在の機会があるか
・学会発表・論文投稿の機会
・直近3年の修了生の進路(アカデミア/企業の比率)

物理系で特に確認したいのが「アカデミアと企業の比率」である。研究室によって、博士進学が前提に近いところと、修士で就職する人が大半のところがある。自分の想定と研究室の標準がズレていると苦しくなるので、早い段階で聞いておきたい。

実験系では大型施設への出張頻度も生活に直結する。放射光施設でのビームタイムは昼夜連続になることもある。

情報提供のお願い

この記事の研究室情報は、学科および各研究室の公式サイトで確認できる範囲でまとめている。所在地・連絡先・研究テーマはそこから取れるが、B3が本当に知りたいこと——実際の在室時間、ゼミの負荷、研究室の雰囲気、修了生の進路——は、どの公式サイトにも書かれていない。

実際、物理学科・応用物理学科の研究室でコアタイムを公開しているところはごくわずかだった。

そこでお願いがある。在籍中の方・修了された方で、差し支えない範囲で教えていただける方は、下記のフォームから送っていただけないだろうか。いただいた情報は研究室ごとに整理して、この記事に反映していく。後輩の研究室選びが、それだけ確かなものになる。

情報提供について
・お名前はハンドルネームで構いません
・「〇〇研は朝9時に集合」のような具体的な情報が最も役に立ちます
・いただいた内容は編集のうえ記事に反映します
・特定の個人を批判する内容は掲載しません


    よくある質問

    物理学科と応用物理学科は、結局どう違うのですか?

    研究室の組織は共通で、大学院では「物理学及応用物理学専攻」として一体で運営されます。カリキュラムの重点に違いはありますが、配属先の選択肢という観点では大きな差になりません。学科名より、どの部門・どの研究室かで考えるのが実際的です。

    化学系ですが、物理の研究室に興味があります。無謀でしょうか?

    分野を選べば無謀ではありません。凝縮系物理学(勝藤研・溝川研・高山研)は物質を作って測る研究で、固体化学・機器分析と地続きです。ソフトマター(多辺研)やアト秒物理(新倉研)も化学と接点が深い領域です。ただし量子力学・統計力学の基礎は求められるので、見学時に必要な準備を確認してください。

    理論系の研究室は就職が不利になりますか?

    一概には言えません。数理的な訓練を評価する企業(金融・IT・データ分析)も多くあります。ただし研究内容と職種が直結しにくいのは事実なので、修了生の進路実績を具体的に確認するのが確実です。

    まとめ
    ・物理学科と応用物理学科は研究室組織が共通。約30研究室・8部門
    ・研究室の約半数が「情報・物理工学」部門に集中
    ・化学と接点が深いのは凝縮系・ソフトマター・アト秒物理
    ・理論系と実験系で日常がまったく違う
    ・アカデミア志向か企業志向かは早めに確認

    学科名ではなく、部門と研究室で選ぶ——これがこの2学科の研究室選びの鉄則である。

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