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ワッカー酸化【Wacker Oxidation】

ワッカー酸化は、パラジウム(II)を触媒としてアルケンを酸化し、カルボニル化合物(通常はメチルケトン)を生成する代表的な有機反応です。

概要

  • Pd(II)触媒を用いてアルケンをケトンあるいはアルデヒドに変換する

歴史

 

反応機構

ワッカー反応は、パラジウム(II)を触媒とし、銅塩(CuCl₂)および酸素を共触媒として使用することで、アルケンをカルボニル化合物へと酸化するプロセスです。この反応は、パラジウム(II)がアルケンに結合し、Pd-アルキル中間体を形成する「ヒドロキシパラデーション(oxypalladation)」というステップが特徴です。ヒドロキシパラデーションは、通常マルコフニコフ則に従い、メチルケトンを主生成物としますが、特定の条件下ではアルデヒドの生成も可能です。

基本的な反応機構

この反応では、条件によってcis-ヒドロキシパラデーションtrans-ヒドロキシパラデーションの両方が進行することが報告されています。低濃度のCl⁻ではcis経路が優先され、高濃度のCl⁻ではtrans経路が支配的になることが確認されています。

実験手順

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実験のコツ

 

発展

ワッカー反応における酸化的アミノ化反応と立体化学​

ワッカー酸化反応のバリエーションの一つである「酸化的アミノ化反応」は、アルケンにアミンを付加し、C–N結合を形成する手法です。特に、パラジウム(II)触媒を用いたアミノパラデーションが注目されています。

酸化的アミノ化のメカニズム

特に、trans-アミノパラデーションが選択的に進行する条件下で、エナンチオ選択的反応が進展することが多く、さまざまな天然物や医薬品の合成に応用されています。また、反応の立体化学は、反応条件や基質によって大きく変化し、特に塩基の強さや添加物の影響が注目されています。

応用例

 

参考文献

<Original Publication>

Tetrahedron Letters 1991, 32 (9), 1175–1178.

Synlett 1998, 1998 (01), 26–28.

<Review>

Eur J Org Chem 2009, 2009 (12), 1831–1844.

J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1 2002, No. 23, 2563–2585.

Tetrahedron: Asymmetry 2014, 25, 1, 1–55.

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