オレフィンとアリル化合物の六中心シグマトロピー反応である。
通常、高温が必須であるが、Lewis酸や遷移金属による活性化でも進行する。
概要
C=C結合のアリル転位を含む反応は、エン反応として知られている。
形式的にはアルケンが二重結合へ付加する反応であり、C-C結合を形成する最も単純な方法の一つである。
アリル位に水素原子をもつオレフィンのエン反応は、カルバーエン反応と呼ばれる。
カルバーエン反応を触媒なしで進行させるためには、アルケンが電子求引性置換基をもっている必要がある。
この求電子化合物は、求エン体と呼ばれる。
エン反応には、用いられる求エン体の多様性から多くの類型がある。
オレフィンは求エン体として不活性であるが、アセチレンよりは求エン性が高い。
高圧下において、アセチレンは様々な単純アルケンと反応して1,4-ジエンを生成する。
求エン体がカルボニル化合物の場合、エン反応はアルコールを与える(カルボニルーエン反応)。
しかし、チオカルボニル化合物の場合はホモアリルチオールではなく、主に硫化アリルを与える(アザーエン, イミノーエン, ヘテローエン反応)。
Pd、Pt、Ni触媒のメタローエン反応は分子内反応で成功を収めている。
エン反応では、エン(アルケン)と求エン体が様々な官能基をもっていてもよい。
エン反応は高立体選択的反応も可能であるし、Lewis酸を加えることで反応性の低い求エン体も使えるようになる。
反応の位置選択性は、水素の立体的な接近のしやすさによって決定される。
通常、第一級水素、第二級水素、第三級水素の順で引き抜かれやすい。
シリル基、アルコキシ基、アミノ基の導入による反応剤の官能基化、すなわち立体的、電子的な性質の変換によって反応の位置選択性が制御される。
歴史
1943年、K. Alderはアリル位のC-H結合の活性化と入手が容易なアルケンのC=C結合のアリル転位を含む反応を系統的に研究した。
反応機構
エン反応は、ペリ環状反応の一つです。
実験手順
更新をお待ちください。
応用例
Z.-T. Huangによるイミダゾ[1,2-α]ピリジンおよびイミダゾ[1,2,3-ij][1,8]ナフチリジン誘導体の合成
Z.-T. Huangらは、アザーエン反応がイミダゾ[1,2-α]ピリジン (imidazo[1,2-α]pyridine) およびイミダゾ[1,2,3-ij][1,8]ナフチリジン (imidazo[1,2,3-ij][1,8]naphthyridine) 誘導体の合成に応用した。
ヘテロ環状ケテンアミナールとMVKのようなエノンの反応はアザーエン付加で進行し、引き続き分子内環化付加反応で生成物を与える。
アロイル置換ヘテロ環状ケテンアミナール(Ar=Ph, 2-フリル, 2-チエニル)はMVKを過剰に用いると、二連続アザーエン反応が進行する。
参考文献
(1)Gao, Yang, Yin, Meizhou, Wu, Wanqing, Huang, Huawen, Jiang, Huanfeng. Copper-catalyzed intermolecular oxidative cyclization of haloalkynes: Synthesis of 2-halo-substituted imidazo [1,2-α]pyridines, imidazo [1,2-α]pyrazines and imidazo [1,2-α]pyrimidines. Advanced synthesis & catalysis. 2013, vol. 355, no. 11-12, p. 2263–2273. DOI: 10.1002/adsc.201300157
B. Ganemによる(-)-α-カイニン酸の不斉全合成
B. Ganemらは、エナンチオ選択的金属促進エン環化反応を用いて、(-)-α-カイニン酸 ((-)-α-kainic acid) の不斉全合成を達成した。
キラルビスーオキサゾリンーマグネシウム過塩素酸塩系では、環化においてシスージアステレオマーが優先的に生成する。
エナンチオ純粋なキナ酸が、入手可能な出発原料から、1,2グラム規模で6工程、総収率20%以上で合成された。
L. Barriaultによる(+)-アルテヌインMの全合成
L. Barriaultらは、鍵反応として連続型オキシCope/渡環エン反応を用いて、二環性コア部分を構築することにより、(+)-アルテヌインM ((+)-arteannuin M) の全合成を達成した。
この連続型反応は、高いジアステレオ選択性およびエナンチオ選択性を保ちながら進行した。
関連書籍