サイトアイコン 化学に関する情報を発信

【仕組みを解説】アルコールの吸収と分解

アルコールの吸収と分解

皆さんはお酒で失敗した経験ありませんか?

お酒は、正しく付き合うとストレス発散につながりますが、間違った付き合い方をすると身体に悪影響を与えます。

最悪の場合、死に至ることもあります。実際に、毎年数人が急性アルコール中毒で亡くなっています。

そのようなことが起こらないように、アルコールの吸収・分解の仕組みを学んでおきましょう。

アルコールの吸収

体内に摂取されたアルコールは、胃や小腸上部で吸収されます。

アルコール吸収の仕組み

アルコールは一般的な食品とは異なり、消化されることなく吸収されます。

通常は、胃から約20%、残りは小腸上部から吸収されます。

小腸での吸収は、胃での吸収より速いことが特徴です。

そもそも、アルコールの吸収は全般的に速く、飲酒後1~2時間でほぼ吸収されてしまいます。

一気飲み ダメ、ゼッタイ

胃や小腸から吸収されたアルコールは、門脈という太い静脈に入り、肝臓に送られます。

肝臓で運ばれたアルコールの多くが分解され、全身の臓器に流れていきます。

そのため、門脈の血中アルコール濃度は非常に高いですが、肝臓を通り過ぎた後はかなり下がっています。

臓器に到着したアルコールは、臓器の水分に拡散されます。

アルコールは親水性なので、水にはよく溶け、油(脂肪)にはあまり溶けません。

アルコール吸収に影響する要因

アルコールの吸収には様々な要因に影響されます。

小腸での吸収は非常に速いため、血中のアルコール濃度が急激に上がり、悪酔いの原因となります。

これが空腹時の飲酒が酔いやすい理由です。

胃の中に何もない状態でお酒を飲むと、アルコールは胃を素通りして小腸に運ばれます。

その結果、多くのアルコールが小腸で急速に吸収され、血中アルコール濃度が急激に上がります。

したがって、飲酒時は食事やおつまみなどと共にし、ゆっくり飲むことが推奨されます。

アルコールの分解

アルコールの分解は、酸化を伴う経路と非酸化の経路とがありますが、ここでは酸化を伴う経路について紹介します。(アルコールの大部分は酸化による経路で分解されます)

アルコール分解の仕組み

酸化過程のアルコール分解は、まず肝臓で行われます。

肝臓に運ばれたアルコールは、アルコール脱水素酵素(ADH, Alcohol dehydrogenase)により、アセトアルデヒドに分解されます。

しかし、このアセトアルデヒドは有毒です。

そのため、アセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素(ALHD, Aldehyde dehydrogenase)により、酢酸へと分解されます。

酢酸まで分解されると、血液に乗って全身に運ばれます。

全身に運ばれた酢酸は、筋肉や心臓で炭酸ガスと水に分解され、熱エネルギーを生み出します。

1 gのアルコールから約7 calの熱を産出できます。

フラッシング反応

飲酒後に顔が赤くなったり、動悸や頭痛が起こったりしたことはないでしょうか?

これらの反応は、フラッシング反応と呼ばれます。

前述したアルデヒド脱水素酵素には3つのタイプが存在します。

低活性型や非活性型の酵素を持っている人が飲酒すると、血中のアルデヒド濃度が上昇し、フラッシング反応が引き起こされます。

フラッシング反応は嫌われがちな反応ですが、お酒に弱い体を守るための遺伝的な防御機能なので、この反応が出たらお酒は控えめにしておきましょう。

自分が持つアルデヒド脱水素酵素のタイプを見分ける方法として、アルコールパッチテストがあります。

アルコールの分解速度

アルコールの吸収が速いことは既に述べましたが、それに伴ってアルコールの分解も速やかに開始されます。

飲酒後のアルコール血中濃度のピークは30分~2時間後に現れ、その後は直線的に減少します。

アルコールの分解速度は酵素のタイプによるので、個人差が大きいです。

平均では、男性で1時間に9 g、女性で1時間に6.5 gのアルコールが分解されます。

ビール瓶1本(アルコール20 g)であれば、男性で2.2時間、女性で3時間程です。

アルコール分解に影響する要因

アルコールの分解に関わる要因は主に2つあります。

一つ目は、肝臓の大きさです。

肝臓が大きいほど、分解が速くなります。

一般的に男性が女性より速いのはこの要因のためです。

二つ目は、アルデヒド分解酵素のタイプです。

これは前述の通り、活性型の酵素を持っていれば速く、低活性型や非活性型の酵素を持っていれば遅くなります。

つまり、アルコールの分解は遺伝の影響も大きいです。

また、年齢の影響も考えられ、高齢になると遅くなります。

お酒に強い人と弱い人

自分がお酒に強いのか弱いのかは誰もが気になることです。

一般的には、フラッシング反応でお酒に強いか弱いかはわかります。

しかし、フラッシング反応が出ない人の中にも、すぐによってしまう人と全く酔わない人がいます。

これは脳のアルコールに対する感受性によるものです。

飲酒を続けるとお酒に強くなります。

一見良さそうですが、分解速度が上がったというよりも、脳の神経細胞が機能変化を起こして感受性が下がった影響が大きいです。

感受性が低い状態になるとアルコール依存症のリスクが高くなるので、気を付けましょう。