テクネチウムに関する情報をまとめました。
テクネチウムの基本情報
和名 | テクネチウム |
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英名 | Technetium |
語源 | ギリシャ語「人工の(technetos)」 |
元素記号 | Tc |
原子番号 | 43 |
原子量 | (99) |
常温(25℃)での状態 | 固体(金属) |
色 | 銀白色 |
臭い | ー |
密度 | 11.500 g/cm3(20℃) |
融点 | 2172℃ |
沸点 | 4877℃ |
発見者 | セグレ, ペリエ(イタリア)[1937年] |
含有鉱物 | ー |
テクネチウムの主な特徴
- 原子番号43の遷移金属元素で、周期表第7族に属す
- 自然界に安定同位体が存在しない最初の元素として知られ、すべての同位体が放射性
- 銀白色の金属で、化学的性質はマンガン(Mn)に似ている
- 核医学においては、短寿命の同位体テクネチウム-99m(99mTc)が医療診断に広く使われており、極めて重要な人工放射性核種
テクネチウムの歴史
発見
テクネチウムは長年「欠番元素」とされていました。周期表ではマンガン(Mn, 25)とルテニウム(Ru, 44)の間に位置しながら、自然界では発見されず、多くの科学者が探索を試みました。
最終的に1937年、イタリアのエミリオ・セグレ(Emilio Segrè)とカルロ・ペリエ(Carlo Perrier)が、サイクロトロンで生成されたモリブデンの破片から人工的に生成された元素43番を分離・同定し、これがテクネチウムでした。
名前の由来
元素名「テクネチウム(Technetium)」は、ギリシャ語で「人工の(technetos)」を意味し、「人工的に作られた最初の元素」であることに由来します。
IUPACにより1947年に正式名称として採択されました。
テクネチウムの主な用途
テクネチウムの用途の大半は核医学・放射線診断にあります:
- 99mTcを用いたSPECT診断: 骨、心臓、脳、腎臓などの画像診断に使用(全体の核医学検査の約8割を占める)
- 放射線標識化合物: アンチボディやペプチドに標識してがん診断に使用
- 化学研究・材料科学: 高レベル放射性廃棄物の挙動解析(長寿命核種として)
テクネチウムの生成方法
テクネチウムの主な同位体である99mTcは、以下のようにして生成されます:
- 親核種モリブデン-99(99Mo)を核分裂反応または加速器で生成
- 99Moが放射壊変することで、娘核種99mTcを抽出
- 生成された99mTcは「ジェネレータ」と呼ばれる装置で病院などに供給
その他、長寿命同位体 Tc-98(半減期:420万年) は中性子捕獲や高エネルギー反応により合成されます。
テクネチウムを含む化合物
テクネチウムは+7から+1まで幅広い酸化数を取り、以下のような代表的化合物を形成します:
- TcO₄⁻(テクネチウム酸イオン): +7価で水溶性が高く、最も安定した形態。診断薬や研究用途で使用
- Tc₂O₇(七酸化テクネチウム): 揮発性の酸化物。乾留や酸化時に生成
- 有機金属錯体: テクネチウム-標識化合物として、薬物送達やバイオセンシングに利用
テクネチウムに関わる研究事例
テクネチウムは以下の分野で活発に研究されています:
- 医用放射化学: Tc-99mを用いた新規診断薬の開発(標的がん診断、臓器機能評価など)
- 高レベル廃棄物評価: Tc-99の長期的な環境中移行性、水和状態、鉱物表面への吸着に関する研究
- 遷移金属化学: Mn、Reと並ぶVII族の中間元素として、価電子構造や錯形成の比較研究
- 原子炉内挙動解析: 核分裂生成物としての分離挙動の理解と再処理プロセス設計への応用
参考図書
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